賃貸にまつわる素朴な疑問 第4弾:家賃滞納

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「知って得する知らずに損する」不動産知識を分かりやすく説明します。

家賃は何か月滞納すると強制退去になるのか

家賃を滞納した原因や理由はさまざまです。やむを得ない事情(病気、入院、失業など)で支払うことが困難な状況もあるでしょう。ただし、家賃を滞納したからといって直ちに退居させられるわけではありません

1ヶ月滞納しただけで鍵を取り換えられたってニュースを見たけど?

一時期、社会問題になりましたね。貸主側は部屋を貸したのではなく鍵を貸しただけだと主張していたとか。これは当然に認められるはずもありません。

たとえ賃貸借契約書等に「1ヶ月でも家賃を滞納した場合は、鍵を交換されても異議は述べないこと」などと記載されていても、借主側は消費者契約法で守られているのでこうした取り決めは無効となります。ただし、ここで注意したいことがあります。それは消費者契約法はあくまでも「個人」を保護する法律ですが、たとえ個人であっても事業用として賃借している場合には「事業者」とみなされてしまうため、この法律で保護されなくなります

そもそも正当な理由がなければ契約は解除されないんでしょ?

貸主側から賃貸借契約を解除する場合は、2つの制約を受けますので自由に契約を解消させることはできません。

1つ目は、解約したい日の6ヶ月前までには予告しておくこと。

2つ目は、正当な理由(正当事由)が無ければ解約の申し入れができないこと。

ここで正当事由とは、借主に契約違反は無いけれども契約を終了させても仕方がないという理由を指します。この理由は貸主と借主お互いの事情を考慮して決定されるものです。

つまり、正当事由には契約違反がないことが前提となっています。

賃貸借契約を締結すると借主は家賃を支払う義務(債務)を貸主に負いますから、家賃滞納という行為は「債務不履行さいむふりこう」という契約違反となります。

よって、正当事由の有無は関係なく貸主は契約の解除を主張できるのです。

では、債務不履行によって直ちに契約が解除されるの?

貸主と借主との信頼関係が破綻していることが認められなければ賃貸借契約は解除されないことになっています。

キーワードは「信頼関係」です。

あなたがコンビニで商品を買っても瞬時に終わる行為ですから、店員との間には信頼関係は認められませんよね。一方でお部屋を貸し借りする関係は通常長期的に継続する契約になるため、お互いの信頼関係の上に成り立っているというわけです。

貸主との信頼関係が崩れたといえるのは3ヶ月?

この信頼関係ですが、1ヶ月の家賃を滞納しただけではまだ破壊されていないと判断する場合が多いようです。

およその目安として3カ月とされていますが、2ヶ月で判断された事例もあります。

また、借主側から良くある主張として、「預けてある敷金から滞納分を補填ほてんして丸く収めて欲しい」というものが良く見受けられます。ただし、貸主にはこれに応じる義務は当然にありませんので肝に銘じておきましょう。

また、3ヶ月等の期間はあくまでも目安にすぎませんので、借主の事情も考慮のうえ信頼関係の破綻の有無が決定されます。

家賃を滞納すると実際何が起こるのか

通常はこのフローチャートのような流れとなります。

近年は連帯保証人を立てずに家賃保証会社と契約している物件も多いです。彼らは督促のプロであることは肝に銘じておいてください。

家賃の延滞情報等は通称ブラックリストに掲載されてしまいますので次のお部屋を借りるときに影響を及ぼしかねません。

なお、裁判には訴訟物の価額が60万円以下の場合には、少額訴訟という原則として1日で手続きが終了する特別な手続きもあります。

家賃保証会社についてはこちらで詳しく解説しています。

遅延損害金はいくらになる?

法定利率約定利率のどちらかによって異なります。

法定利率は賃貸借契約書等で合意されている利率を指し、原則3%となります(ただし、令和2年4月1日より前に締結された賃貸借契約については、5%または6%です)。

約定利率は当事者間で自由に定めることができますが、上限は14.6%です(ただし、平成13年4月1日より前に締結された賃貸借契約については、上限を定めた消費者契約法が適用されないと判断される場合もあります)。

よって、賃貸借契約書等に何も記載がない場合は、原則3%となります

家賃の支払いは借主の義務ですが、どうしても家賃の支払いが困難な場合は貸主や管理会社へ必ず相談してください。後払いや分割払いに応じてくれるケースは意外と多いものです。また、全国の自治体に生活困窮者の支援制度がありますので、こちらの厚生労働省の制度も積極的に活用しましょう。

最高裁判所の判決がでました

2022年に最高裁がいわゆる追い出し条項を違法とする判決を出しました。

家賃保証会社が定めた条項が消費者の利益を一方的に害するものだとして消費者契約法に違反するとしたものです。

最高裁はこの条項の使用禁止契約書の廃棄を命じました。条項について少し詳しく説明すると

①「家賃を2カ月以上滞納」

②「連絡が取れない」

③「建物を相当期間利用していない」

④「建物を再び使わない意思が客観的に見て取れる」

といった4つの要件を満たせば、借主が住居を明け渡したものとみなすといったものでした。

さらに、これらに加えて「家賃を3カ月以上滞納した場合に借主へ催促することなく契約を解除できる」とした条項についても使用の差し止めが命じられました。

個人は消費者契約法によって守られていることが改めて確認されましたが、今後は家賃保証会社の審査がより厳しくなるのではと不安視する声もあがっています。

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