ハザードマップは今やほとんどの自治体で公表されていますので、浸水しやすい土地、液状化しやすい土地、土砂災害が起こりやすい土地については確認することは容易です。
一方で建築コストがかかる土地を見抜くことは素人目では難しいこともあります。
余分な建築コストがかかる土地6選
① 前面道路が狭隘(きょうあい)な土地
建築資材の搬入や棟上げに必要なクレーンなどの重機が入らないため割高になります。
幅員4m以上確保できれば問題ありません。片側がセットバックしていない道路に注意です。
② 傾斜地
高低差のある土地の場合は、造成工事や擁壁の設置工事が必要となります。費用は前者は2万円/㎡以上、後者は5万円/㎡以上を要します。
③ インフラ管が埋設されていない土地
本管から宅地内までの距離があるほど取り付け費用がかさみます。
水道管は1.5万円/m程度、ガス管は1万円/m程度です。
水道管の場合は、たとえ宅地内に引込管があっても口径が13mmの場合は水圧が弱くファミリー世帯には向きません。よって、現在主流の20mm(二世帯住宅は25mm)に変更する必要が生じます。
引込費用のほかに給水申込納付金(水道利用加入金)も支払う必要があります。20mmではおよそ5万~30万円と自治体によって大きく異なります。なお、13mmから20mmに変更する場合は、差額部分を支払うことになります。
地方によっては下水道管がなく浄化槽で対応していることもあります。5人層でも100万円程度かかりますが、補助金を交付している自治体も多いので該当する方は確認してみてください。
④ 土壌汚染や地下埋設物のある土地
土壌汚染の場合は調査費用及び浄化費用がかかります。
掘削除去措置の場合だと土量1㎥あたり6万円程度ですが、期間と費用は反比例する傾向にあります。
また、ガラ(コンクリート片や建築廃材、基礎など)が地中に存在している場合にはその撤去費用が2トントラック1台あたり3万~5万円程度かかります。
⑤ 埋蔵文化財包蔵地
石器や土器などの遺物、古墳や貝塚などの遺跡が地中に存在する可能性の高い土地のことです。
周知の埋蔵文化財包蔵地においては、60日前までに自治体に届出をしなければいけませんし、仮に遺跡等が発見された場合は最長3ヶ月間は工事を中断しなければいけません。
また、たとえ包蔵地に該当していなくても隣接している場合には遺跡等が発見される可能性が高くなりますので注意が必要です。
なお、試掘調査の費用については、居住用の戸建住宅の場合は公費で賄われます。
⑥ 軟弱地盤の土地
見た目だけでは地盤の強弱を判断することは不可能です。上物をいくら強固に仕上げていても土台となる地盤が軟弱であっては元も子もありません。
地盤調査は必ず行われるもの?
法律では義務化はされていません。
ただし、2000年4月に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:品確法)により、宅建業者や建設業者には瑕疵担保責任が課されるようになりました。
これにより、引き渡してから10年以内に瑕疵が見つかった場合には、業者は無料で直すことが義務付けられました。
住宅瑕疵担保責任保険に業者が加入するためには地盤調査報告書等の提出が必要となるので、「原則」として家を建てる前には地盤調査が行われることになります。
原則があるということは例外もあるの?
はい。木造の戸建住宅(2階建て以下)の場合、地盤調査報告書の代わりに「現地調査チェックシート」で代用できます。よって、現地調査の結果、地盤調査が必要ないと判断できる場合もあるのです。
業者が保険に入っているかどうかを見分ける方法はあるの?
注文住宅の場合には請負契約の時、分譲住宅の場合には売買契約の時に説明を受けるほか、建物の引き渡しの際には保険の証明書が交付されます。
なお、このようなロゴマークが事業所内に掲示されていますのでこれからも判断できます。
この瑕疵(かし)保険に加入すると工事中に専門の検査員(建築士)による検査が行われます。
地盤調査はどうやって行うの?また費用はいくら?
戸建住宅の場合はSWS試験(SS試験)、マンション等の場合はボーリング調査が一般的です。
ボーリング調査は数10m下の土を採取して、土質や土層、地下水位などを詳細に分析するものですが、SWS試験は、建物が建てられる場所の4つの隅と中心部の計5ヶ所における深さ10m程度の地質を調査するものです。
正式な結果は3日程度で判明しますが簡易なものはその場でわかります。
費用はおよそ5万円~8万円と、ボーリング調査の1/5~1/7程度です。
地盤調査報告書の見方
換算N値を確認しましょう。この値は地盤の硬さを表す指標であり、N値は通常0から60までの間で示されます。この値が大きいほど地盤が硬く締まっていることを意味します。
木造住宅を建てる場合に必要なN値は最低でも3.0以上とされていますが、5.0以上であれば問題ないといえるでしょう。15.0以上あれば非常に硬い地盤となります。
ただし、これは粘性土(ネバネバな土)の場合に当てはまるものですから、砂質土(サラサラな土)の場合はその2倍以上は必要となります。
また、支持層と呼ばれる固い地盤が地表から2m以内にあれば良い土地と言えます。
N値0~4では、人力で鉄の棒を地面に突き刺すことができる状態、N値4~10では、一般のスコップで地面を掘ることができる状態です。
なお、中低層マンションの場合はN値30以上の層が3m以上、高層マンションの場合はN値50以上の層が5m以上必要です。
マンションの場合はN値だけでなく「層の厚み」も求められるのです。
軟弱地盤と判明したらどうすれば良い?
地耐力が低いと判明した場合には地盤改良工事を行います。
主な工法は「表層改良」、「柱状改良」、「鋼管杭」の3種類です。
① 表層改良工法
セメント系の固化材と掘り起した土を均一に混ぜ合わせて地表面周辺を締め固める工法です。
軟弱地盤の深さが約2mまでの場合に行われます。
施工が簡単かつ短期間で済むため、戸建住宅の場合、費用は2万円/坪程度です。
② 柱状改良工法
セメントミルク(セメント系の固化材に水を加えたもの)を地盤に注入しながら撹拌して、60cm程度の円柱状の改良杭を作る工法です。
軟弱地盤の深さが約2m~8mの場合に行われます。費用は5万円/坪程度です。
③ 鋼管杭工法
支持層となる強固な地盤まで鋼管の杭を打つことで建物を安定させる工法です。
軟弱地盤の深さが約30mまで施工可能です。費用は7万円/坪程度です。
その他注意すべき土地3選
① 盛土、埋立地
盛土は、傾斜地を切り開いたり過去に水田であった土地で行われたりしますが、新しいほど収縮しやすく地盤が安定するまでには時間がかかることに注意が必要です。
なお、新たに土を盛る「盛土」に対して、元からある地面を削る「切土」の方は地盤の強度は高いといえます。
② 道路よりも地盤が低い土地
道下物件とも呼ばれる土地ですが、下水道管に勾配が設けられないので自然排水が出来ません。
よって、ポンプピット(汚水ピット)を設置する必要があります。
また、大雨時の雨水の流入や湿気が発生しやすいといった点にも注意が必要です。
③ 古い擁壁のある土地
高さ2mを超える擁壁を築造する場合は工作物の建築確認が必要となるので、検査済証が発行されているのか不動産業者に確認しましょう。未発行だと違法工作物の可能性があります。
また、たとえ適法であっても擁壁の強度が低下している可能性がありますので、気になる方は建築士によるインスペクション(診断、検査)を行ってください。
また、古い擁壁を撤去して新たに擁壁を設置する場合においても埋め戻しが不十分だと、地盤沈下や液状化のほか陥没も発生しやすくなります。
これらは外観からは判断できませんので、埋め戻し土の種類を確認してみると良いでしょう。最も適している土は「山砂」の砂質土です。ただ、現場によっては「再生コンクリート砂」の方が適している場合もあります。
がけ崩れや土砂の流出が起きやすい土地の見分け方
「宅地造成工事規制区域」「急傾斜地崩壊危険区域」「通称がけ条例」に指定されている土地です。
これらの区域では知事等の許可がなければ工事ができません。また、重要事項説明書にも必ず記載されているので、契約前に確認しておきましょう。
【素朴な質問】 Q. 北側に面している土地はダメ? A. 陽当たりが悪いので避ける方も多いですが、建物の配置や設計プランで欠点をカバーすることができます。むしろ南向きは陽当たりが良すぎるため敢えて敬遠する方もいます。