賃貸にまつわる素朴な疑問 第2弾:抵当権

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「知って得する知らずに損する」不動産知識を分かりやすく説明します。

抵当権が付いている物件に住んでも大丈夫?

抵当権という言葉をはじめて聞いた方、聞いたことはあるが詳しくは説明できない方に簡単に説明すると、銀行が担保にとっている物件のことを指します。

物件の所有者(貸主)は、マンションを購入あるいは建築するにあたり、通常は銀行から融資を受けます。お金を貸した銀行としては返済されなくなった場合に備えて、不動産を人質(担保)にとっておき、現実に返済が不能となった場合には、物件を競売けいばいにかけてその不動産を現金化し貸付額に補てんします。

つまり、物件の所有者が返済不能に陥った場合には競売にかけられる可能性があるのです。

やっぱり、こうした物件は避けた方が良いの?

もう既に住んでいるけど大丈夫?

結論から申しますと、ほとんど気にする必要はありません

平成16年4月1日以降にお部屋を借りている場合には、新所有者から明け渡し(退居)を求められた際には原則として借主は一定期間以内に出ていかなければなりません。

ただし、現状はもしお住まいの物件が競売にかけられて所有者(貸主)が変わったとしても、賃貸借契約はそのまま引き継がれることが一般的です。敷金の返還義務も同様です。

そもそも「抵当権=競売」ではありませんのでそこまで不安視する必要はないでしょう。

たとえ、新所有者が賃貸借契約を引き継がない場合でも、6ヶ月は部屋を明け渡さなくても良いと民法に明記されていますから直ちに退居する必要はありません。なお、この場合においては新所有者は立ち退き料を支払う義務はありませんので、引っ越しに係る費用はすべて負担する必要があります。また、借家権しゃっかけんを主張して居座ることも買取請求もできませんのでご注意ください。

ちょっと待って。借家権って何?

物件を借りると、契約書を貰いますよね。そこには「建物賃貸借契約書」とか「居住用建物賃貸借契約書」などと書かれていませんか?

お部屋を借りる契約を締結したときに、あなたは借地借家法という特別法によって借主としての権利が強く守られています

通常の売買において物件の所有者が変わり退居を求められたとしても、借主はこの借家権を新所有者に主張して対抗することができるのです。

つまり、借家権は借主としての地位を安定化してくれる強い権利なのです。

さて、話に戻ります。

もっとも気を付けなければいけないのは、すでに差押さしおさえされている場合です。

このケースでは新所有者に契約が引き継がれませんので、6ヶ月の猶予期間も敷金の返還も新所有者へ主張することはできなくなります

契約前、特に重要事項の説明を受けるときには、「差押」の登記がないか確認してください。

もし「差押」の文字があったら契約を白紙にすることが賢明です。

新所有者に契約が引き継がれないのなら、6ヶ月間は家賃を支払わなくても良いのでは?

ダメです。

新所有者との間に賃貸借契約は存在していませんが、物件を使用している以上、対価が発生します

その対価は、通常は今までの家賃と同額となることが多いです。例外として、訴訟等に発展した場合には不動産鑑定士が決定する賃料がベースとなり得るのですが、レアなケースでしょう。

契約したときには抵当権は付いてなかったけど、入居してから抵当権が設定された場合は?

これまでの説明は、賃貸借の契約をした時点ですでに抵当権がついていた場合についてでした。

よって、契約した後に設定された抵当権については、借主はリスクを負う必要はありませんのでご安心ください。

まとめ

・抵当権が付いている物件は意外と多い。ただし、直ちに競売にかけられることは少ない。

・競売にかけられても、すぐに退居させられるわけではない。

・差押の登記がある物件は契約しないこと。

・抵当権は重要事項説明書の「登記記録に記録された事項等」欄に記載されている。

不動産業者は必ず取得していますので、最新の登記簿も見せてもらいましょう。

また、抵当権と似た根抵当権ねていとうけんという権利が設定されていることもあります。

これは主に事業者向けに設定される担保権のことであり、銀行への返済が不能となった場合は抵当権と同様、競売にかけられます。

物件を借りるうえでは、抵当権と同じものだと覚えておくとよいでしょう。

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