「知って得する知らずに損する」不動産知識を分かりやすく説明します。
こちらの記事は、フリーランス等の個人事業主と小規模法人向けになります。
大規模オフィスビルについては反響があればまた別の記事で執筆します。
事務所物件と店舗物件については重複している点が非常に多いのでこちらの記事も確認してください。きっと参考になるはずです。
事務所物件特有の注意するべきポイント
賃 料
1階の賃料が最も高い店舗とは異なり、階層ごとの賃料格差はほとんどありません。
共益費は地域のほか建物グレード、規模、築年数等によって異なりますので、共益費込み賃料の単価がいくらとなるのか計算してみましょう。
ネット回線とプロバイダサービス
ネット回線は利用開始まで早くても1ヶ月、遅ければ3ヶ月以上かかることがあります。NTTの担当者に確認したところ最長6ヶ月の事例もあったとのこと。
仕事に支障をきたすので早め早めの対策を行いましょう。特に3月、4月の移動シーズンは要注意です。また、その間にビジネス向けルータとWi-Fiの準備もしておくことも大事なポイントです。
でも、前のテナントが使っていた回線を利用すればすぐに開始できるのでは?
MDFの容量オーバーを回避するためにテナントが退居するたび配線を撤去することがあります。
その場合には、新たにMDFに回線を引き込む工事が必要となります。
たとえ、前のテナントの配線が残っていても回線事業者が違えば利用できません。
これは事業者ごとに個別の回線を通す必要があるからです。
なお、日本には事業数者は150社以上もあるそうです。また、特定の回線事業者しか契約できない建物もありますので、入居前に必ず確認するようにしてください。
賃貸借契約には2種類ありますが、近年増えている方の契約はどっち?
「普通借家契約」と「定期借家契約」。
この違いを理解していないとトラブルの素になりかねません。
「普通借家契約」は、契約書には事業用賃貸借契約などと書かれています。この契約は借地借家法という法律によって、貸主よりも借主の方が強く守られている契約形態となっています。
具体例を挙げると、貸主は正当な理由(正当事由)が認められなければ借主を追い出すことができません。つまり、一度借りてしまえば法定更新され続ける可能性が高いのです。正当事由を補完するために多額の立退き料を支払うことを約束する場合もあるほどです。
一方で「定期借家契約」は反対に借主よりも貸主の方を強く保護する契約形態です。契約で定められた期間を過ぎたら強制的に退居となります。もちろん立退き料を受け取ることもできません。さらに、原則として中途解約できないため、この契約期間内においては賃料を支払い続けなければいけません。
では、定期借家契約の物件は借りない方が良いの?
そういうわけではありません。近年増えているこの定期借家契約ですが、特約を設定するケースが多いのが特徴です。
定期借家契約にはそもそも契約更新という概念がありませんが、再契約という裏技があります。
借地借家法の趣旨からすると正式な契約形態とは言えませんが、実務上一般化しているのが現状です。よって、「再契約型の定期借家契約」かどうか、「契約期間は何年」かについては必ず確認するようにしましょう。
内見するときに注意するべき厳選ポイント3選
① 天井高は2.5m以上あるか
通常のオフィスの多くは2.4mから2.7mです。なかでも2.5mから2.6mに集中しています。
かつて国土交通省が普及の促進を推し進めていたインテリジェントビルは2.6m以上となっており、これが融資基準にもなっていました。
オフィス物件の場合、OAフロア(二重床)が浸透しいます。この厚みが6㎝から10㎝程となるのでこれらを加味して圧迫感の無い物件を選定しましょう。
② 個別空調かセントラル空調か
オフィスでかかる電気代のうち約半分が空調費用です。
ここで個別空調とは、テナントごと又はフロアごとに空調設備が備わっており、温度調節を自由に設定できます。
これに対してセントラル空調とは、中央管理室で一元的に制御されているタイプの空調であり、建物全体で一律に管理されています。
一見すると個別空調の方がメリットがありそうですが、そうとも限りません。
セントラル空調の場合、コアタイム(通常は平日8時から19時まで)における使用料は共益費に含まれていることが多いからです。よって、この時間帯に集中できるテナントにとっては電気代の節約となります。
一方で、コアタイム以外の時間帯や土日祝日にオフィスを利用するテナントにとっては余計な出費となるので注意が必要です。
③ 24時間365日利用可能か
24時間の利用が可能でも、正面玄関が施錠されて専用のカードキーで裏口(通用口)から出入りする必要がある建物も多いです。
夜間帯は管理人不在のため、セントラル空調だとエアコンが作動できないケースや利用にあたり別途契約する必要が生じるケースもあります。さらに、駐車場の入出庫が出来なくなる場合もありますので休館日も含めてこれらについて確認しておきましょう。
オフィスはマンションを借りるときよりも法律で保護されにくいってホント?
契約を締結する際の注意事項は、居住用(アパマン)と基本的には同じですが、ひとつ大きな違いがあります。
それは事業者の場合、消費者契約法によって保護されないことです。
例えば、賃貸借契約書に「原状回復費用について全額借主負担とする」といった条項や特約が定められていたとします。借主が個人である場合には一方的な不利な決め事として無効となるケースがあります。一方で、事業者の場合はこの取り決めを遵守しなければいけないのです。
法人としてではなく個人として借りるから問題ないのでは?
いいえ。
個人については、「事業として又は事業のために」契約の当事者となる場合には「事業者」となるようです。