「知って得する知らずに損する」不動産知識を分かりやすく説明します。前回に続き大事なマイソクの見方と注意点を詳しく解説しています。
賃料だけを見てはダメ!実は予算オーバーになってることも
家賃(賃料)が希望額の範囲内であっても、管理費(共益費)とその他費用(安心サポート費など)を合わせると、毎月の支払い限度額をオーバーしてしまうことがあるので実費の合計額で検討してください。
ただし、総額だけでは家賃が割高なのか割安なのか判別できないので、単価(坪がおすすめ)を割り出して同じエリア内の築年数やグレードが近い類似物件と比較してみましょう。
家賃を面積で割り、さらに0.3025で割ると坪単価に変換できます。
(例)
家賃85,000円 ÷ 面積25㎡ ÷ 0.3025 ≒ 坪11,000円
10%程度の開差(9,900円から1,200円まで)なら正常の範囲とします。
敷金と礼金は、よく知らいないとトラブルの素に!
敷金は退居後に返金される一時金です。ただし、全額が返還されるのではなく、次の費用が差し引かれます。
① 故意(わざと)や過失(誤って)、善管注意義務違反(不注意)などで傷つけた物の修繕費
② 滞納した家賃
③ 原状回復費用
地域によっては保証金という名目となっているものもありますが実質は同じです。
一方、礼金は退去後に返金されない一時金です。これは文字通り貸主に対するお礼の対価となります。むしろお礼されるのは借主の方では?と疑問に思う方も多いはず。これは、そもそもは住宅が不足していた時代に、住まいを提供してくれた大家さんに感謝の気持ちを示したことが始まりのようですが今の時代には合わない慣習ですね。
もっとも、礼金は、貸主が依頼した不動産会社(元付業者と呼ばれます)へ支払う広告手数料と相殺(そうさい)されるので、貸主の懐には入らないケースが多いのですが。
なお、一般的に人気物件ほど礼金が多いのが実情です。これは礼金を支払っても入居したい方が大勢いるため、貸主の強気な姿勢がうかがえます。これも競争の原理なので仕方がない一面もありますね。
敷金から差し引かれる原状回復費用っていくらかかるの?
退居後のトラブルで一番多いのがこの原状回復費用。
これを知る上で重要なキーワードが経年劣化(けいねんれっか)と通常損耗(つうじょうそんもう)です。
経年劣化と通常損耗は「貸主負担になる」と国土交通省のガイドラインで決められています。ただし、特約がある場合は借主負担とすることができてしまいます。
借主が気になるのはこの特約ですが、借主が契約締結時にちゃんと納得していなければ特約を設けてはいけない決まりとなっています。
ここで経年劣化とは、長く住んでいると自然と壁紙(クロス)やフローリング等が色あせてきますが、こうした自然現象による劣化のことを指します。
一方で通常損耗とは、普通の生活で生じてしまうやむを得ない傷のことを指します。よって、タバコの臭いやヤニ汚れは借主の方が責任を負うことになりますので、愛煙家は注意が必要です。
契約書を確認してみたら、特約が書いてあったけど大丈夫?
特約欄に「室内のクリーニング費用は借主負担とする」とだけ記載されている場合があります。
このような場合は、たとえあなたが契約書にサインしていたとしても無効になる場合があります。
クリーニングを行う具体的な箇所や単価だけではなく総額についてもきちんと契約書に明記する必要があるためです。
また、家賃に比べて負担額が高額な場合にもこの特約は無効となるケースがあります。
これから契約する方だけではなく、既に契約している方も退居後の余計なトラブルを回避するためにも覚えておいてください。
原状回復費用は、借主が全額負担するケースは意外と少ない!?
この表は、国土交通省住宅局の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいて作成したものです。
具体的な箇所 | 価値が1円になる年数 |
---|---|
壁紙・カーペット・クッションフロア | 6年 |
シンク(流し台) | 5年 |
エアコン | 6年 |
トイレ(便器) | 15年 |
価値が1円になる年数は入居してからの年数ではなく、新品が設置されてからの年数です。
つまり、仮に2年で退居した場合でも、壁紙が貼り換えられてから6年を経過していれば通常は借主の負担はありません。
入居する際は壁紙が新品に張り替えられたものなのか、前の入居者のままなのかを必ず確認しておきましょう。
たとえ新築で入居し3年で退居したとしても半分を経過しているので、借主の負担は50%で済みます。
もっとも、契約期間中は、借主は善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)を貸主に対して負っているので、好き勝ってに使って良いものではありません。
これに違反した場合は賠償責任を追及されることもあるのです。
上の表にはフローリングが入っていないけど?
入居者が入れ替えるたびにフローリングを張り替える物件はまずありません。
通常は故意や過失により、借主が修繕義務を負う場合においてフローリングの張り替えが想定されます。この場合でも全部を負担することはなく㎡単位での一部負担が原則です。たとえ全面張り替えの場合であっても経過年数が考慮されるので、新品同等の負担とはなりませんのでご安心を。
室内クリーニング費用の目安
タイプ | 負担額 |
---|---|
1R、1K | 20,000円前後 |
1DK、1LDK、 2DK | 30,000円前後 |
2LDK | 40,000円前後 |
3LDK、一戸建て | 50,000円前後 |
知らなきゃ損する火災保険の基礎知識
賃貸住宅の火災保険は「借家人賠償(しゃっかにんばいしょう)責任保険」「家財保険」「個人賠償責任保険」の3つの種類があります。
① 借家人賠償責任保険 : 貸主に対して保証してくれる保険
② 家財保険 : 借主(入居者)自身の家電等に対して保証してくれる保険
③ 個人賠償責任保険 : 人や他人の物に損害を与えた場合に保証される保険
火災保険と借家人賠償保険はセットであることが一般的ですので、契約時にきちんと確認しておきましょう。
また、保険料は1万円から2万円程度が一般的ですが、ネット保険ではさらに割安となっています。
保険料が返金されるってホント?
強 制 | 任 意 |
---|---|
家賃保証会社費用 | 家財保険料、契約事務手数料 |
火災保険料 | 鍵交換費、室内消毒費、町内会費 |
契約事務手数料は、契約時に仲介手数料を満額(家賃の1ヶ月分+消費税)支払っている場合には支払う必要はありません。契約更新時(通常は2年後)に必要になるケースが多いです。
火災保険料は掛け捨てではありません。
途中解約の連絡をすれば解約返戻金(かいやくへんれいきん)を受け取れます。
お部屋を契約した不動産屋が自動的に手続きしてくれるわけではありませんのでご注意を。
たくさんの方が忘れている(知らない)ことのナンバーワン。
支払いが強制のものと任意のものを知っておこう!