【実録】失敗しない注文住宅

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「理想の住まいは3回建てなければ完成しない」と昔から言い伝えられています。

もっとも、実際に3回も建築できる方は極少数です。

我々一般人にとっては一生に一度の買いものですから、できるだけ100点満点に近づけたいものです。これから挙げる実際にあった失敗事例には、家造りのヒントがあるはずです。

間取りの失敗事例

【体験談】

限られた室内空間に上下の変化を付ける提案として、スキップフロアダウンリビング小上がり等を採用した。

子供が小さいうちは室内での目線の変化が楽しく、にぎやかな生活を楽しめた。

高齢の両親を自宅に呼び寄せ三世代同居することになったが、足腰が弱った両親には段差が多くて室内の移動がままならなかった。

さらに吹き抜けのあるリビングが冬場に底冷えし寒いため、両親は寝室に閉じこもりがちになってしまった。

【解決・回避策】

住宅を建てるのは20代から30代の若い夫婦と子供世帯ですが、その時点での家族構成と自分たちの体力を基準にすると、将来的に後悔することにもなりかねません。

両親の姿は将来の自分たちの姿です。ライフステージや家族構成の変化に対応できるようにするためには、段差を極力減らしたバリアフリー設計をおすすめします。

また、リビング階段や吹抜け空間は暖かい空気が上部に溜まるため、足元が寒くなる傾向があります

開放的な間取りにする場合は、床暖房やセントラルヒーティングなどの全館暖房とセットで考えましょう。

シーリングファンサーキュレーターで室内の上下の気温が均一となるような工夫も必要です。

ライフステージの変化や家族構成の変化に対応した間取りにしましょう。

【体験談】

長期優良住宅仕様で注文住宅を建築したが、構造強度の制約で壁が多く、大きなリビングが取れなかった。

大きな窓が設けられず、全体として室内が暗い家になってしまった。

【解決・回避策】

長期優良住宅としての認定を受けるためには「耐震性能等級3」が必須となり、これは建築基準法で定められた最低基準の1.5倍の耐震性能であることを示します。

建築基準法は、数百年に一度程度の極めて稀に発生する地震力(震度6強から7)に対して「倒壊・崩壊しないこと」、数十年に一度程度の稀に発生する地震力(震度5強)に対して「損傷しないこと」を基準に定められています。

ですから、「耐震性能等級1(建築基準法レベル)」であっても、建物の倒壊で人命が危険にさらされることにはつながりません。

「耐震性能等級3」は大地震に対する備えとして非常に安心ですが、その代わりに耐力壁を多く設ける必要があり、さまざまな間取りの制約を受けることになります。構造材も太くなり、コストアップの要因ともなります。

「等級3」という数字にとらわれ過ぎずに、本当にご自分が快適に過ごせる間取りが何かを設計士とよく相談しましょう。

耐震性能を気にしすぎては閉鎖的な家になってしまいます。

施工会社選びの失敗事例

【体験談】

代表の感性やデザイン提案に魅了され、アトリエ系の建築事務所に依頼して注文住宅を建てたが、引き渡し後に施工不良などのトラブルが続出した。

連絡をすればそれなりの対応はしてくれるが、スピードが遅く意欲があるようにも思えない。

対応も職人や業者任せで、原因や対策について納得の行く説明が得られない。

今では施工品質を重視して依頼先を選べば良かったと後悔している。

【解決・回避策】

注文住宅は施工会社のアフターメンテナンスが重要です。

打ち合わせから引き渡しまではあっという間ですが、その後数十年に渡って住み続けるものですので、むしろ引き渡してからが長い付き合いのスタートです。

引き渡し後は、定期点検でチェックしてもらうことはもちろん、気になる点や不具合があった場合には確認に来てもらう必要があります。対応窓口が明確で、気軽に相談ができる体制があるかを確認するようにしましょう。

近隣での施工の実績や、実際建てた人の口コミがあれば安心ですが、実際に依頼するまでにはなかなか踏み切れないと思います。

その場合は、その会社の紹介受注の割合を質問すると良いでしょう。

展示場や完成住宅見学会での新規集客受注に頼らずとも、OB客の紹介で安定して受注できている場合は、アフターフォローが優れていると判断できます

良いハウスメーカーや工務店はアフターフォローが総じて良いものです。

仕様の失敗事例

【体験談】

展示場で見て触れた質感にあこがれて、住宅のリビングにパインの無垢フローリングを導入した。

肌触りが良く、歩行感も柔らかいため非常に気に入っていたが、3年経過後にささくれが目立つようになり、靴下に引っ掛かるようになってきた。

子供が裸足で歩いていたときに鋭い木片が足裏に刺さり、怪我をしてしまった。

【解決・回避策】

無垢フローリングは樹種により「広葉樹フローリング」「針葉樹フローリング」に分けられます。

「広葉樹フローリング」・・・オーク・ウォルナット・バーチ 等

「針葉樹フローリング」・・・パイン・杉・ヒノキ・赤松 等

広葉樹は木細胞の密度が高いため硬く、針葉樹は密度が低いために柔らかいという特徴があります。

針葉樹は冬場でも裸足で歩けるくらい、足裏の熱を奪われにくく快適です。

注意しなければならないのは、床暖房がある場合です。

床暖房があると、フローリングの裏側から加温されるため冬場には木材が過乾燥になります。その結果木材が収縮してひび割れが生じ、表面にはささくれが発生する可能性があります。

無垢フローリングを選定する場合は、メーカーが「床暖房対応」としている乾燥に強く収縮変形しないものを選定しましょう。

【体験談】

外壁に窯業系サイディングを採用したが、3年後に反りが目立つようになり表面の塗装もボロボロ剥げてきた。

新築なのにこれは無いだろうと工務店にクレームを入れたが、材料の経年劣化だと言って取り合ってくれない。

【解決・回避策】

「10年保証」をアピールするハウスメーカーや工務店がありますが、これは住宅の施工者に加入が義務付けられている「住宅瑕疵担保責任保険」に加入していることを指すことがほとんどです。

瑕疵担保責任は、構造躯体と外壁の漏水の瑕疵(設計ミスや施工ミスによる欠陥)に適用されるもので、部材の経年劣化には適用されません。

外壁材の劣化はメーカー保証になります。

参考に、某大手メーカーの窯業系サイディングの保証規定をご紹介します。

保証期間10年・・・外壁材本体の割れ、欠損、反り

割れとは、全幅、全厚にわたり割れている状態を指します。ただし、切断、加工した部分を起点とする不具合は除きます。また、欠損とは、一部が欠け損じ、壁体内が見える状態を指します。反りとは、壁体内が見える、または455mmのスパンに対して矢高しこう(下図参照)が5mm以上の状態を指します。

                            出典 岐阜県森林研究所

保証期間2年・・・外壁材本体の亀裂、反り、外壁材本体および同質出隅の塗膜の著しい剥離・変色・褪色たいしょく

亀裂とは、幅0.2mm、長さ50mmを超えるものを指します。また、反りとは、455mmのスパンに対して矢高が3mm以上5mm未満の状態を指します。著しい剥離著しい変色褪色とは、施工年数を考慮しても見苦しく、社会通念上、明らかに補修が必要な状態をいいます。

亀裂や塗膜はたった2年しか保証されないことに驚かれる方も多いと思います。

外壁の塗り替えやコーキングの打ち直しなどの外壁リフォームは100万円単位の出費になることがあります。

ランニングコストを含めて考えると、耐久性のあるタイル金属系の外壁を選択するほうが20〜30年の長期的スパンで考えた場合にはお得になることがあります。

住宅の外装材はイニシャルコストよりもランニングコスト重視で選びましょう。

【体験談】

冬に暖かい家を期待して住宅を建てたが、窓の結露に悩まされている。

特にリビングの掃き出し窓と寝室の窓の結露がひどい。

窓付近から冷気が伝わっている気がして、窓をもっとグレードアップしておけばよかったと後悔している。

【解決・回避策】

一般的なアルミサッシを使用した住宅は、窓や玄関等の開口部からの熱損失は建物全体の損失の6割を占めると言われています。外壁や断熱材の選定と同じくらい、窓の選定も大切です。

住宅用サッシには、次の4種類があります。

アルミサッシ

アルミ樹脂複合サッシ

樹脂サッシ

木製サッシ

アルミに比べて樹脂の熱伝導率は1/1000と非常に低いため、樹脂サッシにすると断熱性が格段に向上します。

また、気密性や遮音性に優れているという特徴もあります。

樹脂サッシを選定し、ガラスをペアガラスあるいはトリプルガラスにすると断熱性能が飛躍的に上がり、結露を防ぐことができます。

さらに、Low-Eガラス(ガラス表面に金属膜をコーティングしたもの)を選択すると、夏の暑さを和らげ冬の暖房効率を高める効果があるのでおすすめです。

新築住宅なのに窓の結露がひどいなんてことは結構あります。

設備の失敗事例

【体験談】

火を使わないので安全で、ヒートポンプを利用した給湯(エコキュート)を導入して光熱費が安くなると説明を受け、オール電化住宅にした。しかし、光熱費はガスを使っていた以前の家よりも思ったより安くならず、むしろ高くなった気がする。

さらに、今冬の電気料金の高騰で請求金額が昨年の倍近くに跳ね上がり、家計に大きなダメージを与えている。

【解決・回避策】

電力会社が用意しているオール電化住宅用の料金プランは、深夜帯の電気代が格安に設定されています。

エコキュートは深夜帯の電力を利用して沸かしたお湯をタンクに貯めるため、光熱費を削減できるという仕組みです。

しかし、このオール電化住宅用の料金プランは、深夜帯が安い分昼間の電気代が割高に設定されています

共働きの家庭などで、日中はほとんど家にいないため電気をあまり使わないというご家庭であればメリットがありますが、二世帯住宅など昼間も誰かが家にいて電気を良く使用するご家庭であれば、かえって光熱費が高くなってしまうことがあります。

回避策としては、自家消費型の太陽光発電システムや蓄電池の導入が考えられます。

昼間の発電分がそのまま家庭内の照明や家電製品を動かすのに使えるだけでなく、蓄電池を併用すると昼間の発電余剰分や安い深夜電力を蓄電池に貯めるなどして、上手に電気をやりくりすることが可能になります。

蓄電池の代わりに電気自動車のバッテリーを利用するV2Hも急速に普及しています。

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