失敗しない火災保険の選び方

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火災保険の契約は3つの点に注意

1つ目:個人賠償責任保険が二重契約となっていないか

個人賠償責任保険は日常生活において他人の物や体に損害を与えてしまった場合に、賠償金の支払いを補償してくれる保険です。

年間の保険料は数千円前後と加入しやすいことや、最近増えている自転車事故に対する意識の高まりも相まって、当該保険に契約している方が増えています。

この個人賠償責任保険ですが、損害保険自動車保険の契約時に特約やオプションとして付帯している方も多いはず。二重払いになるので現在加入しているプランを確認してください。

2つ目:補償内容は必要最小限に、保険金額は時価ではなく新価にする

賃貸物件だけでなく売買物件においても不動産会社から火災保険を紹介されることがあります。

特に賃貸の場合は内容を確認することなくサインしてしまう方が多いですが、賃貸物件における火災保険は、「建物」ではなくあくまでも「家財」に対する補償となっており、建物自体は補償対象とはなっていないのです。建物に対する保険は所有者の方で加入します。

よって、家財補償の上限額が高いようであれば、不要なものを取り除いて補償額を見直してみることをお勧めします。

売買物件においては、保険金額に注意してください。

保険価額は建物の評価額のことであり時価新価の2種類がありますが、新価で設定することをお勧めします。なぜなら、時価の場合は新築価格から経年による減価額が控除されてしまうため、足りない(保険で賄えきれない)金額を自分自身で補てんする必要が生じてしまうからです。

一方、新価の場合はまるまる全額が補償されますので、物価上昇時とくに建築費が高騰している近年においてはとりわけ重要です。よって、「保険金額=新価」に設定しましょう。

3つ目:地震保険の補償は最大でも半額しか支払われない

まず、地震保険は単体での契約はできません。必ず火災保険に加入していないと契約できない仕組みとなっています。

地震大国の日本において、3世帯に1世帯しか加入していない地震保険。

入らない理由の第1位は、地震保険の補償だけでは新たに建物を再建築(又は再購入)することができない点が挙げられます。

では何のための保険であるのでしょうか。それは、被災したあとの生活を再建するお手伝いといった趣旨でつくられた保険であることです。つまり、被災した建物というよりは生活の方に水準を当てた保険なのです。

地震保険はいくらまで補償してくれるのか

契約した保険金額の全額が支払われると思っている方も多いですが、支払われる金額は最大でも半額までとなっています。

具体的には、「加入している保険金額の30%~50%まで」かつ「居住用建物は5000万円まで、家財は1000万円まで」と定められています。

例えば、保険金額が建物5,000万円、家財1,000万円の契約だとしても建物は最高2,500万円、家財は最高500万円となります。

もっとも、これは全損した場合ですので、一部損だと建物は125万円、家財は25万円が上限となります。

つまり、「保険金額×30%~50%」がベースとなり、これに下記の全損から一部損までの掛け率を乗じた金額が支払われることになります。

【全損】100%  【大半損】60%  【小半損】30%  【一部損】5%

全損はなかなか認定されにくい

東日本大震災における建物・家財の全損の支払件数は、4万2,222件の4.9%半損が20万6,333件の24.2%一部損が60万4,643件の70.9%(※)であり、一部損の占める割合が多いのが現実です

引用【平成24年度日本保険学会大会】シンポジウム「巨大災害・巨大リスクと保険」地震保険制度の諸課題、黒木松男著P74

新耐震基準、つまり1981年6月以降に建築確認を受けた建物は、震度5強程度では軽微な損傷、震度6強から7に達する程度の大規模地震でも倒壊は免れる性能を持っていますので、このような建物が全壊することは稀といえます。

さらに、「地震に強い家」はユーザーが求める性能の上位にあるため、住宅メーカー各社は最新の工法や素材、地盤改良の技術を開発してしのぎを削っていることからも、今後も耐震性の向上が図られていくものと思われます。

木造は地震に弱い?

建物を支える基礎には、ベタ基礎布基礎があります。

建物をで支えるベタ基礎の方がで支える布基礎よりも耐震性は高くなっています。

また、鉄骨や鉄筋コンクリートは素材そのものの強度は強固なのですが、木造にはこれらには無いしなやかさがあるため、このしなりによって地震による建物の揺れを吸収分散させてくれます。

さらに、素材自体が軽いので地震による揺れに強いといった特徴もあります。

よって、木造家屋=耐震性が低いと判断するのは早計です。

以上の3点に留意して火災保険を選択することをお勧めします。

火災保険にまつわる素朴な疑問

地震保険金を受け取った後の保険契約はどうなる?

全損の認定、つまり保険金額が100%支払われた場合には損害が発生した時点にさかのぼって保険契約は終了します。

よって、大半損、小半損、一部損の場合には、その後も契約が継続されることになります。

なお、地震保険は火災保険とセットで契約するものですから、本体の火災保険の契約が終了した場合には付帯する地震保険の方もその時点で契約終了となります。

大地震が発生した場合、保険会社の支払い額は莫大です!経営破綻しないの?

大丈夫です。

地震保険は政府民間損害保険会社が共同して運営しています。

よって、保険会社では賄えきれないほどの補償が発生した場合においても、政府が再保険を引き受ける仕組みになっているので安心です。民間と公的のハイブリッドな保険といえるでしょう。

火災保険に入らないとどうなる?

隣家からのもらい火によって、自宅が損害を受けた場合は当然に損失が補償されると思っていませんか?

答えはNO.です。

令和の時代においても明治時代に制定された「失火責任法」とういう法律によって、失火者は重大な過失(重過失)が認められなければ損害賠償責任を負わないとされているのです。

これは、鉄筋コンクリート造等の堅固な建物が無く、耐火性能の低い木造家屋が密集する明治時代において、火災による延焼は至る所で発生していました。このような延焼に対して失火者が責任を負うとなると損額額が多大となり過ぎるため失火者を保護する必要が生じたためにこうした法律がつくられたのです。

時代錯誤といった意見も数多く見受けられるこの失火責任法ですが、現状どうすることもできません。ここで重過失とは、

① 対策を何ら講じない寝たばこ(寝落ち)による火災

② ストーブをつけたままの給油による火災

③ 加熱しているてんぷら油の入った鍋を放置したことのよる火災

などが過去に判例として認められています。

つまり、注意を払えば容易に火災を防ぐことができたにも関わらず、何ら対策を講じることなくこれを放置した場合が重過失となるようです。

この重過失の判断は裁判所が下すものですから、一律に定まるものではなく事案によって認定基準は異なることに注意しましょう。

転ばぬ先の杖として火災保険には入っておいて損はないでしょう。

掛け捨てタイプの火災保険でも返金されるの?

契約の解約はいつでもできると保険法でも明記されていますが、賃貸住宅の場合は退去時に、戸建住宅や分譲マンションの場合は引渡し時に解約日を設定しましょう。

もし解約日を引っ越しが決まった日に設定してしまうと、入居期間中に火災が発生した場合は当然に保険がおりませんから、空白期間を作らないことが大事です。火災はいつ発生するのかは誰にもわかりません。

火災保険の解約を申請すると満期までの未経過期間分の解約返戻金かいやくへんれいきんが払い戻しされます

賃貸物件の場合、この手続きを忘れている方が非常に多いです。不動産会社や管理会社は手続きしてくれませんので、ご自分でやりましょう。

なお、満期直前だと解約返戻金が無いこともありますし、一括払の場合は、1年以下の契約だと返還されませんので注意ください。

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