筆者は店舗仲介業と店舗開業の両方の経験者です。以下実例を踏まえて説明します。
前回は助成金や補助金など開業後に役立つ情報について解説しました。
今回は皆さまから頂いた質問等を中心に主要なものをQ&A方式でまとめました。
質 問 コ ー ナ ー
予算の都合上、思ったよりも狭い物件しか借りられなかった。店内を広く見せる方法があったら教えて欲しい
一般的に圧迫感を解消する方法として、天井色を寒色系としペンダントライトやシャンデリアなど光が上部全体に放射(拡散)される照明を用いると良いとのアドバスを見かけます。
ただし、これらが店の雰囲気にマッチするとはかぎりません。
そこで光天井です。
少し専門的になりますが、光天井とは天井面に和紙や乳白色のガラス板などの光を拡散透過するパネルを設置し、その上部に光源(照明器具)を内蔵してムラなく間接的に光を照射する全般照明のことを指します。
低い天井が高く見えるだけでなく、開放感のある室内空間を演出できる視覚効果があります。
この記事のアイキャッチ画像が光天井となります。
飲食店の開業を予定しています。ネットでは厨房設備機器の割引率がもの凄い業者があります。何か裏があるのでしょうか
定価はあってないような世界と言われていますので、新品が50%OFFや70%OFFなんて商品も見かけます。
販売価格が他店よりもかなり安い業者には、ちょっとしたカラクリがあります。
それは、搬入費や設置費等は含まれておらず、あくまでも機器単体の価格となっていることです。
保証料も別途かかります。だからと言って専門知識がない素人が設置するのは危険です。
電気、ガス、水道の配線・配管等に熟知したプロに任せましょう。
どうしても費用を抑えたい方は内装設備業者と相談のうえ施主支給を検討すると良いでしょう。
施主支給とは機器単体だけを発注者(あなた)が用意して、設置等を業者にお任せするやり方です。
もっとも、設備業者に一任した方がトータルコストが安くなる場合も往々にしてありますので見積りをとってから検討してください。
保健所の施設検査で注意することは何ですか
検査が通らないと開業スケジュールに大きく影響するほか、余計な出費がかさみます。
なお、営業許可書の交付まで少なくとも2週間以上はかかりますので併せてご注意ください。
以下、主な注意点を説明します。
① 調理場の床は防水処理されており、かつ水はけが良いか
グリストラップの設置は保健所ではなく、各自治体の条例で義務づけられている場合があります(東京都は必須となってます)。
② 2槽シンクが設置されているか
最低限の大きさとなるよう寸法が決められています。なお、1槽シンクだけでも食器洗浄機があれば許可される保健所もあります。
③ 厨房内とトイレ内の2箇所に手洗い場があるか
従業員専用とお客さん専用に分かれている必要があります。また、洗剤ボトルを固定させなければならないとする保健所もあります。
④ 冷凍冷蔵庫に温度計が設置されているか
業務用であれば標準装備されていますが、家庭用や中古品等設置されていない機種については後付けでも問題ありません。
⑤ 食器棚には戸(扉)がついているか
全ての食器類が収まる大きさの物でなければいけません。
⑥ ダストボックス(ゴミ箱)は蓋つきのものであるか
蓋は固定式、取り外し可能なもの、どちらでも構いません。
⑦ 窓に網戸が付いているか
防虫・防鼠(ネズミ)対策がされている必要があります。ただし、開放しない窓の場合は不要です。
消防署への届出も必要って聞きました。何をすれば良いのか教えてください
届出しなければならない主要な書類は以下の4点となりますが、①から③は通常は内装業者が行ってくれます。費用に含まれているのか確認しておきましょう。
① 防火対象物工事等計画届
② 防火対象物使用開始届
③ 火を使用する設備等の設置届
④ 防火管理者選任届
④については、飲食店や物品販売店では収容人員が30人以上の場合に必要となります。
よって、30人未満の小規模店舗は届出義務がありません。
施設検査と消防検査にひっかかり、施工後に一部やり直しとなる事例もあります。
着工する前の計画段階で必ず保健所と消防署には事前相談してお墨付きを得てから工事に着手するようにしてください。
間仕切り(パーテーション)の高さによっては規制が厳しくなるって本当ですか
間仕切りを天井まで隙間なく設置するタイプは個室とみなされます。
消防法に基づく届け出が必要となるばかりでなく、仕上げ材を防火性能のものとしたり、排煙窓の確保などの各種防災設備を設置したりと規制がだいぶ厳しくなります。
個室と半個室とでは工事費用も異なるので店舗レイアウトを考える際はこのことも頭に入れておきましょう。なお、違反した場合には罰則もあります。